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【インタビュー】粕谷執行役員に聞く、デジタル銀行の絶対王者、楽天銀行の戦略: SPUと内製システムが支える「メイン口座」への進化

  • 執筆者の写真: 橘 優斗
    橘 優斗
  • 12月12日
  • 読了時間: 9分

経済産業省 石井芳明

楽天銀行の粕谷執行役員が語る、「エコシステムの最大化」と「システム内製化」がもたらす顧客満足の最前線とBaaSの未来。



INDEX








  1. 創成期から現在:エコシステムの「核」としての銀行の進化


ーー 楽天グループに参画された当時の狙いを教えてください。


粕谷:当行の前身であるイーバンク銀行(2000年創業)が楽天グループ入りした2009年当時、楽天グループは、楽天市場を中心とした事業展開を進めており、EC事業と関連性の強い金融サービスを強化することを目的に、クレジットカード事業などに続き、銀行を加えることになりました。


ーー 今は、金融取引(フィンテック)がインターネット上で行われることが成熟期を迎えたと思います。当時と比べ、銀行の役割はどのように変化しましたか?


粕谷:フィンテックが広がる中で、お客様もインターネット上で金融取引を行うことへの抵抗感が減ってきていると感じています。また、ECの取引以外にも、銀行が提供できるサービス自体のラインナップも拡大しており、お客様がスマホやPC一つで手軽にすべての手続きを完結できるシーンが増えています。これによりデジタルバンクをご利用いただく機会は飛躍的に拡大していると実感しています。


ーー 2023年に上場されましたが、楽天グループとしての立ち位置だけではなく、銀行単体としての成長戦略も意識されているのでしょうか?


粕谷:楽天グループは多岐にわたる分野で70以上のサービスを提供し、楽天エコシステムを形成しています。上場後も、楽天エコシステムの中の銀行として、その強みを最大限に活用していくというスタンスに変わりはありません。引き続き楽天会員のお客様にとって、最も便利な銀行を目指して施策を進めています。一方で、銀行機能単体で見ても、お客さまの日常生活のあらゆるニーズに応えられるようサービスラインナップを拡充しています。楽天エコシステムとの連携と銀行単体のサービス拡充、これらを通じてお客様にとっての利便性向上を追求しています。

楽天銀行の事業規模は、2025年9月末時点で口座数1,732万口座 、預金残高12.2兆円 と、国内デジタルバンクにおいてNo.1の地位を築いています。特にメイン口座数(給与・賞与受取または口座振替利用)は570万口座まで増加しており、メイン口座率は32.9%です。これは、楽天銀行がお客様の日常生活のなかで利用される「メインバンク」として着実に選ばれていることを示していると思います。


口座開設数並びに預金残高はデジタルバンクの中でトップ(2026年3月期第2四半期(中間期)決算説明会資料より抜粋)
口座開設数並びに預金残高はデジタルバンクの中でトップ(2026年3月期第2四半期(中間期)決算説明会資料より抜粋)





  1. SPUと「ロイヤルティ」の獲得戦略


ーー 成長の根幹には、SPU(スーパーポイントアッププログラム)を核とした楽天エコシステムの囲い込みがあると思います。この経済圏戦略の成功要因は何でしょうか?


粕谷:SPUは、楽天市場でのお買い物時に、楽天銀行の口座振替や給与受取といった特定のサービス利用に応じてポイント倍率が増える仕組みです。私たちは、お客様に「楽天エコシステムをもっとお得に、もっと便利に利用していただく」ことを目指し、SPUを実施しています。具体的には、楽天銀行を楽天カードの引き落とし口座に設定しお支払いいただくことで+0.3倍、給与・賞与・年金の受取で+0.2倍といった形でポイントアップが適用され、楽天銀行口座がお客様の生活の起点になる明確な動機付けになっています。これにより、お客様には「楽天エコシステムから離れがたい」というインセンティブを強く感じて頂けていると思います。他社のサービス利用を完全に排他的に制限するのではなく、「楽天エコシステムのサービス内で揃えた方がお得」という優遇施策で、お客様が自発的に経済圏内のサービスを選択するように促しているのが特徴です。


楽天エコシステムのサービスと連携した優遇はこれだけではありません。このほかにも、楽天カードのご利用代金の引き落としがあるお客さま向けに、カードの種類に応じて円普通預金の金利を上乗せしています。また、楽天証券との口座連携サービスである「マネーブリッジ」をご利用のお客様にも金利優遇を行っています。なお当行では、より一層お客様にお得さを感じていただけるよう、今年7月に、給与・賞与・年金のお受取やデビットカードのご利用、楽天カード以外の口座振替など、当行が提供していますさまざまなサービスのご利用状況に応じて、円普通預金金利をさらに上乗せする「ボーナス金利」を拡充いたしました。当行のサービスをご利用いただければいただくほど、金利がアップするプログラムとなっています。


※「ボーナス金利」の詳細はこちら


加えて、より多くのお客様に当行のサービスを知っていただき、ご利用いただくことを目的に、2025年12月1日(月)から2026年2月28日(土)までの期間限定で、口座開設やサービスのご利用に対して特典進呈額が過去最大となる「過去最強の特典祭」を開催しています。最大25,000円相当の特典となっていますので、この機会にぜひ楽天銀行の便利さとお得さを体験してみてください。


※「過去最強の特典祭」の詳細はこちら


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ーー SPUは、銀行事業の収益に貢献していますか?


粕谷:メイン口座のお客様には、非メイン口座のお客様と比べて多くの預金を預けていただき、当行のサービスを幅広くご利用いただいています。SPUをきっかけに、お客様に日常生活でのメイン口座としてご利用いただき、さらに楽天証券とのマネーブリッジ連携(預金残高のうち52.3%を占め、6.0百万口座が連携)や、金融商品、ローン、デビットカードといったさまざまなサービスをご利用いただくことで、お客様の利便性が高まると同時に、銀行としての収益も向上しています。






  1. スマホシフトの徹底と「内製化」の強み


ーー デジタルバンクとしての長い歴史がありますが、現在の利用比重はPCとスマートフォンのどちらが大きいですか?


粕谷:利用の大半がスマートフォンとなっています。基本的にアプリ一つで、時間と場所を選ばず、いつでもどこでも、すべての金融サービスが提供できるというのが、お客様にとっての最大のメリットであると自負しています。


ーー システムの内製化が御社の大きな強みだと思いますが、内製化のメリットは?


粕谷:当行の最大の特徴は、システムをすべて内製化していることであり、これが非常に大きな強みとなっています。当行の全従業員に占めるシステム関連部署のシステム人員比率は55.6%に達しています。

お客様の声に耳を傾け、フロント部門とシステム部門が密接に連携することで、お客様のニーズに合わせたサービスを迅速に開発・提供できています。レガシーアセットを保有せず(支店/自社ATMなし) AIの活用を含む業務改善を推進することで、経費率(営業経費/業務粗利益)は、現状32.9%まで低下しています(前年同期比4.7pt改善)。これにより、お客様へのサービス向上に、より多くの資源を投入できています。


ーー 貸出金についても多角化されていますね。


粕谷:お客様のニーズに応えられるよう、住宅ローンやカードローンをはじめ多様なローン商品を用意しています。ここ最近では、主にシニアの方向けの「楽天銀行リバースモーゲージ」の拡充を行ったほか、楽天証券との連携による「楽天銀行証券担保ローン」をリリースしました。「楽天銀行証券担保ローン」は残高が、サービス開始から約4か月で100億円を突破するなど、大変ご好評いただいています。今後もお客様のニーズに合わせてさまざまな商品の展開をしていければと考えています。






  1. BaaS戦略:システム内製化の強みと「本気の企業」との提携


ーー 他のデジタルバンクが積極的に進める「BaaS」戦略に対し、御社の取り組みは?


粕谷:現時点では、BaaSを数多く提供するということは考えていません。私たちは、BaaSの取り組みを通じて、提携先企業様が持っている特別なアセットやノウハウと楽天銀行の銀行サービスを組み合わせ、お客様にとって、銀行だけでは作り得ないユニークで魅力的な金融サービスを提供していきたいと考えています。


ーー 具体的な提携先は?


粕谷:現在、JR東日本グループとの「JRE BANK」(運輸事業) 、第一生命との「楽天銀行第一生命支店」(生命保険) など、お客様にとって身近な企業と連携し、より便利で価値のある金融サービスを提供しています。「JRE BANK」では、運賃4割引券などの魅力的な特典が話題となり、お客様にも好評いただいていますが、こういった取り組みは、当行が目指している提携先企業様と作り上げていくBaaS事業の好例と考えています。


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ーー システムの内製化は、BaaSに有利に働きますか?


粕谷:システムの内製化は、BaaS事業の推進に際しても非常に大きな強みとなっています。提携先企業様ごと、そして最終的にはお客様のニーズに合わせてカスタマイズしたサービスをゼロベースで作り上げられるのは、当行ならではの大きなメリットです。


楽天銀行のBaaS提携先(2026年3月期第2四半期(中間期)決算説明会資料より抜粋)
楽天銀行のBaaS提携先(2026年3月期第2四半期(中間期)決算説明会資料より抜粋)




  1. 業界展望と「メイン口座」への進化


ーー 今後の展望として、特に力を入れている分野はありますか?


粕谷:私たちは、AIの活用に大変力を入れています。内部の業務効率や精度向上のためだけでなく、お客様がもっと便利に、もっと快適に当行をご利用いただけるように、AIを活用した新しいサービスや機能をお届けしたいと考えています。例えば、お客様一人ひとりに寄り添った金融サービスをご提案したり、お困りごとをスムーズに解決できるようサポートしたりすることで、これまで以上に充実した顧客体験を提供することを目指しています。さらに、最新のデータテクノロジーを駆使して、お客さまのニーズをより深く理解し、それぞれの方に最適なサービスを提供することで、満足度向上を図っていきたいと考えています。お客様ご自身も気づいていないようなニーズも含め、お客様にとって本当にお役に立つ最適なご提案を通じて、より快適な金融体験をお届けしていきたいと考えています。


ーー メガバンクがモダナイゼーション(最新の技術やアーキテクチャに刷新すること)により、スマホ利用を進める事で、既存のデジタルバンクとの競争は激化しています。


粕谷:ネットバンキング部門にメガバンクが本格的に参入していますが、デジタルバンクが広がることで、これまでデジタルバンクを利用してこなかったお客様も含め、「どの銀行のサービスが便利なのか?」という比較と検討が生まれてくると考えています。そうした中で、お客様に選ばれる銀行となるべく、楽天エコシステムとこれまで培ってきたサービスの強みを、お客様にとってより一層価値あるものとなるように磨いていくことに努めています。





経済産業省 石井芳明

楽天銀行株式会社

執行役員 マーケティング本部 本部長

粕谷 珠生

2003年楽天株式会社(現楽天グループ株式会社)入社。楽天市場事業での営業職を経て、2005年より楽天オークション株式会社へ出向、広告・マーケティング部門を担当。2014年に楽天株式会社(現楽天グループ株式会社)金融業務室へ異動し、EC等のインターネット事業と金融事業間の連携強化を進め、主に楽天銀行の顧客基盤拡大を推進。2021年より楽天銀行株式会社の執行役員を務める。






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