AIが加速させるスマホ・PC「値上げの時代」到来
- 藤崎 翔太
- 2025年12月15日
- 読了時間: 3分

半導体メモリの価格高騰が止まらず、製造コストの上昇が2026年以降、スマートフォンやPCなどの一般消費者向けデバイスの価格に波及する見通しだ。
現在、パソコンの自作パーツ市場では、DRAM(実行メモリ)やNANDフラッシュ(ストレージ)の価格が急激に上昇しており、一部では半年で価格が2倍以上になったケースも報告されている。この部品レベルでのコスト増は、いよいよ完成品であるスマートフォンやノートPCに転嫁されつつある。専門家の多くは、この価格高騰は一過性のものではなく、少なくとも2026年第1四半期まで続くと予測している。デジタルライフに不可欠なデバイスが、今後「値上げ」を前提としたものになる可能性が高まっている。
参考)TrendForce. "Memory Price Surge to Persist in 1Q26; Smartphone and Notebook Brands Begin Raising Prices and Downgrading Specs."
メモリ争奪戦の元凶:「HBM」とAIブーム
メモリ価格高騰の最大の要因は、世界的なAI(人工知能)開発ブームである。特に、AIのトレーニングや推論に不可欠なデータセンター建設が世界各地で加速している。
このデータセンターで大量に必要とされているのが、従来のDRAMより高速なHBM(高帯域幅メモリ)だ。HBMは製造が難しく、高い利益率が見込めるため、主要なメモリメーカーは次々と一般向けDRAMやNANDフラッシュの生産ラインをHBM向けに振り替えている。
その結果、パソコンやスマートフォン向けの一般メモリの供給が大幅に不足し、価格が急騰している。この現象はまさに「AIによるメモリ争奪戦」であり、高利益率のAI市場が、一般消費者市場の部品調達コストを押し上げている構造だ。

参考)価格.com "CT16G56C46U5 [DDR5 PC5-44800 16GB] 価格比較"
スマートフォンへのコスト波及メカニズム
スマートフォンには、アプリの実行に使われるDRAM(LPDDR)と、写真やデータを保存するNANDフラッシュ(内蔵ストレージ)という、二種類の高騰しているメモリ部品が不可欠である。
メモリ価格の上昇は、スマートフォンの製造コストを直接的に押し上げる要因となる。特に、薄利多売の戦略を取る中・低価格帯のAndroidスマートフォンメーカーほど、このコスト増を吸収しきれず、値上げに踏み切る公算が大きい。
さらに懸念されるのが、価格高騰を避けるための「スペックダウン」だ。特にエントリーモデルでは、コスト吸収のために、DRAM容量が8GBから4GBや6GBに引き下げられたり、ストレージ容量の最小構成が増やせないといった「逆戻り現象」が発生する可能性がある。
2027年には回復する見込み
今回のメモリ高騰は、過去の半導体市場の周期的な需給バランスの崩れとは異なり、AIという巨大な構造変化によって引き起こされている。この構造変化が続く限り、一般向けメモリ市場の逼迫は容易に解消されないだろう。
市場調査会社や金融機関の分析によると、AI向けHBM(高帯域幅メモリ)生産の優先による汎用メモリの供給不足は、メーカーの新たな大規模生産ラインが稼働し始める2027年以降まで続くと予測されている。つまり、私たちはデバイスの「高性能化は価格上昇とセットになる」という新たな時代に直面しており、この傾向は今後少なくとも2年間は継続する見込みだ。