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【インタビュー】小野沢執行役員に聞く、GMOあおぞらネット銀行の挑戦: 法人の「イコールパートナー」と必然のBaaS戦略

  • 執筆者の写真: 橘 優斗
    橘 優斗
  • 12月12日
  • 読了時間: 9分

経済産業省 石井芳明

メガバンクを技術屋としてみてきた経験者が語るデジタル銀行の真髄。イコールパートナーの理念と、創業直後の法人を支える必然のBaaS戦略を徹底解剖



INDEX








  1. GMOあおぞらネット銀行誕生の経緯と理念


――GMOインターネットグループとあおぞら銀行が共同でデジタルバンクを立ち上げることになった経緯と狙いを教えてください。

 

小野沢: GMOインターネットグループは、社会のインフラを担う総合インターネットグループです。

過去、新規ビジネスの1つとして地方銀行などがインターネット業界に一斉に関心を持ち始めた時期に、複数の金融機関からGMOインターネットグループに、「一緒にネットバンクを作りませんか?」というお声がけがありました。すでにネット証券などネット金融を展開していたGMOインターネットグループは、親和性の高さを感じ、ネット銀行の立ち上げを模索するようになりました。立ち上げにあたり、まずはメインバンクであるあおぞら銀行の当時の社長に、ご相談に行ったところ、「それなら一緒にやろう」という話になり、ジョイントベンチャー(JV)という形で、あおぞら信託銀行を衣替えし、GMOあおぞらネット銀行を立ち上げることになりました。あおぞら銀行とGMOインターネットグループのシナジーを最大限に発揮し、既存の枠組みにとらわれない「銀行×IT」の融合による新しい金融サービスの提供を目指しスタートしました。



独自の役割分担とイコールパートナーシップ


小野沢: 立ち上げ当初から、基本的なビジネス面やシステム面についてはGMOインターネットグループがリードし、銀行業としてのガバナンスなどはあおぞら銀行が担うという、非常に良い役割分担ができていたと思います。

GMOインターネットグループには、金融システムを自社で開発するバックグラウンドとスキルがあったため、立ち上げ当初はGMOクリック証券のエンジニアも参画し、システムを作り込んでいきました。


――議決権比率(あおぞら銀行85.12%)を見ると、あおぞら銀行の意向が強く反映されるのでは?

 

小野沢: 事業開始時の精神は現在も変わっておらず、「50対50のイコールパートナー」という位置づけです。ジョイントベンチャーとして、あくまでイコールパートナーであり、その考え方で運営しています


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  1. ゼロベースの内製システム構築と挑戦


――実質的に、ゼロベースで新しい銀行を立ち上げるという、かなりチャレンジングな選択をされましたね。


小野沢: 本当に困難な道を選んだと思いますが、よくここまで作り上げたなと、手前味噌ですが感心します。私自身、当社に参画するまでに、これまでさまざまな銀行のシステムを見てきましたが、GMOあおぞらネット銀行のシステムは本当によくできています。「パッケージとして使う部分はここまで」「自分たちで手を入れる部分はここ」といったアーキテクチャ設計、そのデザインが非常にうまくできていると感じます



内製開発のすごさ


小野沢:私自身の経験の中でも、「銀行の勘定系システムを内製でここまで作り上げた」というのは本当にすごいと思います。いまはエンジニアのほとんどがプロパー社員で社員の4割を占めます。エンジニア陣から生み出される内製開発力が当社の大きな強みの一つです


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  1. BaaS戦略:オープンバンキングへの必然的な参入


――BaaS(Banking as a Service)に力を入れていらっしゃいますが、当初から他社向けにAPIを提供する構想はあったのでしょうか

 

小野沢: 2018年7月の事業開始当初からホワイトラベル銀行構想(当時はプラットフォーム銀行構想と呼んでいた)はありました。しかし、まだその時はAPIで提供するという構想はありませんでした。これは後から出てきた話です。

ちょうど2018年7月の事業開始前に銀行法の改正があり、オープンAPIの開放努力義務化の話がありました。まだネット銀行としてはスタートしていない信託銀行時代でしたので、信託銀行としては取り組まないがネット銀行としてはどうするか?と社内で議論になりました。その中で「自分たちの強みは何か」「差別化要因は何か」を突き詰め、「ネット企業らしいオープンバンキングの形を提供しよう」となりました。ビジネス・エンジニアが一体となって議論しながら作り上げたのが、我々の銀行APIサービスです。



インターネットの常識に基づくAPI戦略


小野沢:まだ日本では、各行がオープンAPIの準備中という時期でしたので、国内事例がなく、シンガポールのDBSやドイツ銀行など、オープンバンキングが進んでいる海外事例も参考に進めました。特に現在まで生きているのが、インターネットの常識に則り、仕様はオープンに公開し、誰でも使える形にすることを重視したことです。

我々は銀行ですが、「銀行がインターネットバンキングを提供する」のではなく、「IT企業が銀行ライセンスを持ってサービスを提供する」という意識で取り組んでいます。そのため銀行APIにおいても、仕様の公開、原則利用料無償、コミュニティ運営、SDK公開(GitHubへのソースコード登録)、サンドボックス環境の提供などを行いました。その当時、国内銀行ではここまでの取り組みがありませんでしたので、銀行業界の方々からは驚かれました。



BaaSは必然の結果


小野沢:BaaSやエンベデッドファイナンス(組み込み型金融)を始めたのは、「海外で流行っているから」という理由ではありません。銀行APIを提供する中で、「どのように使ってもらえば有効なのか」と議論を重ねた結果、自分たちがAPIを用意し、銀行機能をお客様のサービスに組み込んでもらうことが最も自然で正しい姿ではないか、という結論に至りました。

そこから、組み込み型金融の文脈で「銀行APIの次の見せ方・使われ方」を提案していこう、という形になったのです。つまり、BaaSのサービス自体は結果として生まれたものであり、ある意味必然的にできたものだと認識しています。


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  1. 収益構造とフォーカスする顧客層


――BaaSによる収益も重要視されていますか?

 

小野沢: B to B向けのBaaSの利用料や手数料はいただいていますが、それ自体が銀行業の主たる収益ではありません。私たちは、BaaSや銀行APIはあくまで「チャネル」と位置づけています。銀行APIというチャネルを通じて多くの取引を生み出し、「口座の組み込み」や「組み込み型金融(各種銀行機能・サービス)」の提供によってお客様や、そのサービスを利用するエンドユーザーが便利になり、結果として銀行としての収益が上がることが本質だと考えています。

 


トランザクション収益が中心


小野沢: 当社のデジタルバンク事業の柱は、現時点ではトランザクション収益です。具体的には、振込取引やデビットカードのインターチェンジフィーなど決済収益がメインになります。将来的にはバランスシートを活用した貸し出しの拡大も検討していく予定です

 


創業直後の法人をナンバーワンサービスで支える


――他行と比較した場合の、GMOあおぞらネット銀行の強みは何でしょうか?

 

小野沢: 私たちは、法人のお客様、特に創業直後の法人にとってナンバーワンの銀行でありたいと考えています。

  • 強み1:銀行口座をオンライン完結で手続きしやすいこと。

  • 強み2:手数料を抑えていること。

  • 強み3:税金や社会保険料などの納付にも対応しており、創業直後から5年目程度のお客様にとって使いやすいサービスを提供しています。


こうした取り組みの結果、東京商工リサーチの「メインバンク調査」において、昨年と一昨年でメイン企業数の増加率ランキングナンバーワンの評価をいただくことができました。

我々をご利用いただいているお客様は、いわゆるベンチャーファンドが支援するような「ピカピカのスタートアップ」というより、もう少し現場に近い、「起業してみよう、新しい事業を始めてみよう」という方々が中心です。そのため、今後は、創業融資などにも対応できるよう準備を進めていきたいと考えています

 


独自の経済圏戦略:組み込み型金融の意義


――楽天経済圏のような、グループとしての経済圏的な役割は意識されていますか?

 

小野沢: 考えていないわけではありませんが、GMOインターネットグループという経済圏への依存度は高くありません。GMOインターネットグループ自身が、社会の黒子的な役割であるため、経済圏として大きな訴求力は得られにくいでしょう。我々が組み込み型金融に注力している理由の一つはここにあります。楽天やPayPay、au、ドコモといった他のネット銀行が独自の経済圏を持っている一方、我々は経済圏を持っていません。そのため、経済圏を持つ企業に使っていただくことで、我々の銀行の知名度やフットプリントを広げることにつながると考えています。


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  1. 未来の銀行へ:AI活用の展望


――今後の展望として、ITやデジタル分野で注目していることはありますか?

 

小野沢: 我々の将来を考える上で重視すべきなのは、AIの活用だと思います。

銀行は労働集約型産業と装置産業の組み合わせで成り立っており、AIの貢献は非常に大きいと考えています。我々の強みである「低コストでスピード感をもって最新鋭のサービスを提供し続ける」ためにもAIは重要です。

AIの活用には二つの大きな側面があります


  1. プロセス効率化のためのAI: 装置産業部分のプロセシングを効率化し、お客様対応やモニタリングを効率化する。

  2. お客様とのインターフェースとしてのAI(AIエージェント): 法人向け・個人向けを問わず、お客様との接点を強化し、お客さまの利便性を追求する。


我々は常に既存の枠にとらわれない「未来型の銀行」を目指しており、それを実現するための取り組みについて、常に議論しています。今後は、システムが担う部分、AIが担う部分、人間が担当する部分の役割分担の比率が大きく変わっていくのではないかと考えています



経済産業省 石井芳明

GMOあおぞらネット銀行株式会社

執行役員 営業本部長 兼 カスタマーサポートグループ長

一般社団法人Fintech協会 理事

一般社団法人電子決済等代行事業者協会理事

小野沢 宏晋

1989年、武蔵工業大学(現・東京都市大学)経営工学科を卒業後、日本アイ・ビー・エム株式会社に入社。銀行向けシステム構築やソリューション開発、メガバンクの統合プロジェクトに従事した。2007年にはIBM Corporationに派遣され、大手金融グループや金融ソリューション企画部門に参画。帰任後は地方銀行向けサービスや共同化システム運営会社の取締役副社長を経て、2013年に日本IBM理事、2017年にはバイスプレジデントとしてアウトソーシング事業の事業開発を担当。2019年よりGMOあおぞらネット銀行に参画。金融システム構築から経営企画まで幅広く経験を持つ。






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