Ankerが「安全性の再定義」と「ワンブランド化」を宣言—Anker Power Conference 2026 全発表まとめ
- 藤崎 翔太

- 6 時間前
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Ankerが2026年最大の新製品発表会を開催。新バッテリー技術「Neo Lithium-ion Battery」をはじめ、AIイヤホン、ロボット掃除機、ポータブル電源など多数の新製品を一挙公開し、全ブランドの「Anker」統一も発表した。
2026年5月27日、Ankerジャパンは「Anker Power Conference 2026」を開催した。冒頭、代表取締役CEO猿渡 歩氏は日本国内における累計販売台数が1億台を突破したことを報告。「国民全員が約1台Anker製品を持っている計算になる」と述べ、過去最大となる売上830億円の達成も明らかにした。
数字の大きさだけでなく「重み」を強調した代表は、2月に発表したリチウムイオン電池搭載製品の安全性強化に向けた取り組みを振り返り、「作る・使う・捨てるすべてのフェーズで品質を見直してきた」と述べた。本カンファレンスはその「作るフェーズ」における新たな答えを発表する場として位置づけられた。
Neo Lithium-ion Battery—釘刺し試験100%通過の独自セル技術
代替素材ではなく、リチウムイオン電池の「深化」を選択
Ankerが今回発表した独自バッテリーセルが「Neo Lithium-ion Battery」だ。近年、業界では半固体電池やナトリウムイオン電池など代替素材の採用が進んでいるが、Ankerはあえてリチウムイオン電池の進化の道を選んだ。
その理由として挙げられたのは主に3点。①実証実験データの蓄積がリチウムイオン電池に比べてまだ不十分であること、②航空機への持ち込み制限や廃棄ルールが整備されていないものがあること、③同容量でもサイズが大きく重くなりがちで、毎日持ち運ぶモバイルバッテリーには不向きであること——だ。
「安全性と利便性をどちらも妥協なく高い次元で両立させたい。その答えとして選んだのは、長年磨き上げてきたリチウムイオン電池をもう一段多角的に進化させるという道」と担当者は説明した。

Neo Lithium-ion Batteryの3つの革新ポイント
① 不純物の徹底排除 電極と電解液は、製造過程で微細な不純物が混入すると内部ショートや化学反応を引き起こし、発熱・発火の引き金となる。Neo Lithium-ion Batteryでは電極での異物含有量を667万分の1未満に抑え、電解液では水や過酸化物の含有率を業界最高基準で管理することで、発火原因を根本から絶つ仕組みを実現した。
② 長期使用でも劣化しにくい安定性 充放電を繰り返す中でセル内部に物質が蓄積していく「デンドライト」という現象は、バッテリー業界が長年向き合ってきたテーマだ。Neo Lithium-ion Batteryは独自技術でこの経年変化の進行を大幅に抑制。電極の独自表面処理と電解液の配合最適化により、化学反応も同時に抑え、寿命の最後まで安心して使用できる設計を実現している。
③ 過酷な物理テストへの対応—釘刺し試験100%通過 満充電のセルに直接釘を刺し、強制的に内部短絡を起こす「釘刺し試験」は通過が極めて難しいとされるが、Neo Lithium-ion Batteryはこれをすべてのセルでクリアした。さらに135℃での熱暴走試験、強い圧力をかける耐圧試験など複数の厳しい試験もすべて通過している。

ハードとソフト両面でも安全性を強化
バッテリーセルだけでなく、筐体素材とバッテリーマネジメントシステムも同時に進化した。
筐体には高い難燃性を持つ素材を採用。着火しても燃え広がらず、万が一の発火でも火を外部へ広げない封じ込め性能を備えている。
ソフト面では、Anker独自の新しいバッテリーマネジメントシステムを開発。セル1つひとつをミリ単位で個別に監視し、検知した異常の度合いに応じて製品を一時ロック、または使用不可にする機能を実装。使用回数が増えると充電電圧を自動で調整する機能も搭載した。これらの情報はAnker専用アプリと本体ディスプレイでいつでも確認できる。

第1弾製品「Anker Nano Power Bank Mag Boost Plus」
Neo Lithium-ion Batteryを搭載した第1弾製品として、Anker Nano Power Bank Mag Boost Plusが本日より数量限定で予約販売開始、今年夏から一般販売予定。今後、既存のモバイルバッテリーラインナップも順次Neo Lithium-ion Battery搭載モデルへ切り替えていく方針だ。

スターフライヤーとの連携—機内USBケーブル貸し出しサービスも開始
安全性への取り組みの一環として、Ankerジャパンは航空会社のスターフライヤーとの連携も発表した。2026年7月の法改正により、機内でのモバイルバッテリーからデバイスへの充電が禁止されることを受け、スターフライヤーが運航する全路線・全便でAnkerのUSBケーブルを貸し出すサービスを開始する。スターフライヤーはすでに全機全座席にUSBポートとPC電源ポートを設置しており、今後は機内へのモバイルバッテリー持ち込みに関する啓発コンテンツの共同制作や、客室乗務員向けの安全知識研修サポートにも取り組む予定だ。

Anker Style Pouch—難燃素材を採用したガジェットポーチ
この夏に向けて登場するアクセサリーが「Anker Style Pouch」だ。モバイルバッテリーや急速充電器、ワイヤレスイヤホン、ケーブル類をすっきり収納でき、背面ポケットにはパスポートも収まる旅行対応のガジェットポーチとなっている。
最大の特徴は内部生地に国際的な難燃規格「UL94 V-0」に合格した素材を採用している点。機内での使用など旅先での予期せぬ事態にも、大切なガジェットを安全に守ることができる。安全性への意識をハードウェアだけでなくアクセサリーにまで広げた製品だ。

Soundcore Liberty 5 Proシリーズ—独自AIチップ「Thus™」で業界最高水準のノイキャンを実現
世界初・コンピュートインメモリをイヤホンに搭載
Soundcoreブランドのフラグシップシリーズ「Liberty」は国内累計販売台数250万台を突破。その最新作となる「Soundcore Liberty 5 Pro」と「Soundcore Liberty 5 Pro Max」が本日より販売開始となった。
両モデルに搭載されたのが、Anker独自開発のAIチップ「Thus™(ザス)」だ。従来のチップはCPUとメモリが分離した構造を持ち、驚くべきことにデータ移動だけで消費電力の約90%が費やされていた。Ankerはこの課題に対し、情報処理と保管を一体化させた「コンピュートインメモリ」アーキテクチャを採用。これを世界で初めてイヤホンに搭載することに成功し、演算処理性能を従来比約150倍に引き上げた。

Liberty 5 Proの主な進化点
ウルトラノイズキャンセリング4.0を初搭載。8つのセンサーとThus™の処理能力を組み合わせ、前モデルの約2倍のノイズキャンセリング性能を実現
骨伝導センサーをSoundcoreのイヤホンとして初採用。8つのマイクとの組み合わせで、騒がしい環境でもクリアな通話が可能に
完全ワイヤレスイヤホンにおける最高通話性能スコアとしてギネス世界記録に認定
9.2mmダイナミックドライバー搭載、Dolby Atmos対応、AIによるBluetoothサウンド補正で音質劣化を約65%低減
HearID 5.0によるパーソナライズイコライザー、3台同時接続マルチポイントに対応

Liberty 5 Pro Max—ケースに進化を詰め込んだ最上位モデル
上位モデルのLiberty 5 Pro Maxは、Liberty 5 Proの全性能に加え、充電ケース自体に1.78インチの大型ディスプレイを搭載。スマホを出さずにケースのタッチ操作だけで電池残量確認、モード切替、ノイズキャンセリング強度調整が可能だ。
さらにAIボイスレコーダー機能をケースに内蔵。ケースの録音ボタンをワンタッチするだけで即座に録音を開始し、データをリアルタイムでアプリに転送。文字起こしだけでなく、会議の要点整理まで対応する50種類以上のAI要約テンプレートも利用できる。
このAIボイスレコーダー機能のバックエンドにはMicrosoft Azure AIのテクノロジーが活用されており、150以上の言語・アクセントに対応したリアルタイム音声処理が可能。日本マイクロソフトの担当者も壇上に登場し、Ankerが2026年に「AIイノベーションアワード」を受賞したことを紹介した。
Soundcoreアプリも進化し、録音内容に対してAIアシスタントへのチャット検索機能、重要なポイントをワンタップで保存するインサイト機能が新たに追加された。

ポケモンデザインの充電関連製品やイヤホン—日常の旅を冒険に変える4製品
「ポケモンと一緒なら、日常の旅も冒険に変わる」をコンセプトに、今年30周年を迎えるポケモンとのコラボレーション製品4種が発表された。
① ピカチュウデザインのUSB急速充電器(ケーブルバンド付き) 最大70W出力、3台同時充電可能なパワフルさながら、ピカチュウデザインのケーブルバンドが同梱されたコンパクトな急速充電器。
② トラベルアダプター 世界200以上の国と地域で使用可能な主要プラグを備えたトラベルアダプター。通電するとモンスターボールが光るデザインが施されており、旅先での充電をさらに楽しくしてくれる。
③ ポケモンデザインのワイヤレスイヤホン(初登場) 今回初めてポケモンデザインのイヤホンが登場。歩きながらでも周囲の音を聞き逃さないイヤーカフ型の完全ワイヤレスイヤホンで、ファッションアイテムのように身につけられるのが特徴。ピカチュウモデルは黒とビビッドイエローのアクティブなカラーリング、イーブイモデルはベージュとブラウンのナチュラルなツートンカラーで展開する。
④ トラベルポーチ ジッパー部分にモンスターボールのデザインをあしらったトラベルポーチ。今回発表した3製品をまとめて収納できる。

Eufy Robot Vacuum Omni S2—吸引力3万Paのロボット掃除機最高峰
スマートホームブランドEufyの最上位ロボット掃除機「Eufy Robot Vacuum Omni S2」が本日より販売開始となった。
性能面では従来モデルの3.8倍となる最大3万パスカルの吸引力を実現。一般的にスティック掃除機に使われるサイクロン技術をロボット掃除機に応用した「エアラトアボシステム」を搭載し、フィルターが詰まりにくく高い吸引力が長時間持続する。
水拭き機能を担う「ハイドロジェットシステム2.0」も進化し、壁を検知すると自動でモップが伸びる伸縮ローラーモップを新搭載。壁際まで丁寧に水拭きできる。さらに1.5kgの圧力をかけながら床を押して磨くという、最高レベルの水拭き機能も搭載した。
ナビゲーションには新技術「CleanMind AIシステム」を搭載。障害物だけでなく、床の素材や汚れの種類、家具の配置まで理解し、部屋に応じた最適な掃除を自律的に判断する。自動車の自動運転やドローンに使われる3D技術を応用した「3D ToF X 2.0」では前モデルから大幅に増え、200種類以上の障害物を認識できる。
メンテナンスフリーの面でも、自動クリーニングステーションに汚れセンサーを新搭載し、モップの汚れ度合いに応じて洗浄時間を自動調整。「ヨースパイナルブラシ」により、ゴミ収集時にブラシが分割して髪の毛を吸い込み、毛からみのメンテナンスを大幅に削減している。
高性能と空間に自然と調和する洗練されたミニマルデザインを両立した「ロボット掃除機のSクラス体験」として展示された。

Anker SOLIX S2000 Portable Power Station—災害備蓄にも対応する世界最小・最軽量ポータブル電源
首都直下地震や南海トラフ地震への備えとして高まる防災ニーズに応えるべく、新たなポータブル電源「Anker SOLIX S2000 Portable Power Station」が発表された。2026年9月より販売開始予定。
本製品の最大の特徴は圧倒的な小型化だ。Ankerのポータブル電源として初めて、一般的な円筒型セルではなく角形のリン酸鉄リチウムイオン電池を採用。セル同士を隙間なく高密度に配置することで大幅なコンパクト化を実現。さらに基板設計をゼロから見直し、従来は大きなスペースを占めていたコンデンサーを容量維持のまま縮小。基板のサイズを約60%小型化することに成功した。結果として同容量帯の従来製品と比べて約36%の小型化を達成し、世界最小・最軽量を実現している。
長寿命化も両立しており、エネルギー効率が向上したセルの採用でサイクル回数が従来の1.5倍となる6,000回を実現。15年以上の長期使用に対応する設計となっている。
また、Anker独自の「OptiSave(オプティセーブ)テクノロジー」により、待機時の消費電力を従来の20Wから約6Wにまで削減。いざというときにバッテリーが切れていた、という事態を防ぐ。
本製品の大きな用途として強調されたのが据え置き型の家電バックアップだ。冷蔵庫などの家電につないだまま設置しておくことで、停電時に自動でポータブル電源からの電力供給に切り替わる。冷蔵庫であれば約2日間稼働させることができ、在宅避難時のWi-FiやデスクトップPCの電源維持にも対応する。

ANKERブランドの統一「Soundcore」「Eufy」もAnkerへ
カンファレンスの締めくくりに、Ankerジャパン代表から大きな発表が行われた。新コーポレートミッション「Innovation Faster(イノベーション・ファースター)」のもと、2つのブランドアップデートを実施するという内容だ。
1つ目はAnkerロゴの刷新。進化と力強さを表現した新しいロゴデザインが披露された。
2つ目はブランドの統合。これまで充電・モバイル周辺機器の「Anker」、オーディオの「Soundcore」、スマートホームの「Eufy」と3ブランドで展開してきた製品群を、すべて「Anker」に統一する。Soundcore、Eufyブランドについては年内をめどにAnkerへ集約される予定だ。
質疑応答でこの背景を問われた代表は「創業当初はブランドを分けることで各カテゴリーに特化した印象を持ってもらえるメリットがあったが、今は低額から高額ラインまで全領域でトップシェアを取っている。プロジェクターを買った方が『Nebula (ネビュラ)ブランドよりAnkerのプロジェクターとして認知が強い』というケースも多く、アフターサポートの一体感という観点でも、ワンAnkerで展開することが自然な流れになった」と語った。日本では以前からAnkerブランドを前面に出す形をとってきたが、グローバルでも同様の方針に切り替えていく。

「安全のAnker」から「安全で革新するAnker」へ
Ankerが今回のカンファレンスで見せたのは、「守りの安全性」と「攻めの技術革新」の同時進行だ。
Neo Lithium-ion Batteryの発表は、昨今のモバイルバッテリー発火問題を背景に、単なる製品スペックの話を超えて「Ankerが何を信じ、何に賭けるか」というブランドの姿勢表明でもあった。代替素材に飛びつかず、既存技術の深化で業界最高安全基準を目指すという判断は、地道だが説得力がある。
一方でThus™チップによるイヤホンの演算処理150倍向上、Microsoft Azure AIとの提携、ロボット掃除機の3万Pa吸引力など、技術的な攻めの姿勢も際立っていた。「Innovation Faster」という新ミッションは、こうした二面性を1つの言葉で束ねたものといえる。
ブランド統合については、消費者にとってわかりやすさが増すメリットがある一方、長年Soundcoreやeufyブランドに親しんできたユーザーにとっては少々寂しい知らせかもしれない。ただ、どのカテゴリーでも「Anker品質・Ankerサポート」を一貫した体験として提供するという姿勢は、1億台突破という実績を持つブランドとして自然な成熟の証かもしれない。
日本国内での存在感をいっそう高め、「Empowering Smarter Lives」から「Innovation Faster」へと旗を掲げ直したAnker。次の1億台をどう刻んでいくか、注目したい。




































